『羅刹の夫婦』・・・これは現七夜一族当主七夜晃と彼の妻、雪。
そして同じく当主七夜誠、そしてその妻、小夜この二組をさす。
この二組の夫婦が羅刹の象徴として混血達に恐れられるようになったのは彼ら二人が当主となって少し経ってからの事である。
この当時、混血達の間には七夜を侮る空気が満ちていた。
何しろ鬼神と恐れられ、二十年以上七夜の前線を支えてきた、歴代七夜当主の中でも最強の誉れ高い七夜黄理が遂に前線を退いた。
更に欧州にて『真なる死神』と呼ばれ、次世代の七夜を率いる事は確実と思われていた黄理の息子七夜志貴は特に表立っては要職についた気配はない。
それ所か彼が暗殺者の任についた話すら聞かず一部では『七夜志貴の力を嫉んだ一部の七夜が彼を追放した』、『いや、七夜志貴はすでに暗殺された』と言う七夜側から見れば怒る価値すらない噂まで飛び交っていた。
ともかくこの噂により混血たちの間では、七夜の力は黄理の時代よりも遥かに弱体化したと思われていた。
余程用心深い者でない限りは多少なりとも気が緩もうというものであった。
最も、それはとんでもない過ちである事に彼らが気付くのに、そう時間は掛からなかったが。
話を戻し、この屋敷の主もその一人であった。
黄理が現役時は鬼神の異名に恐れをなし、表向きは大人しくしていたのだが、黄理が引退すると同時にその気が大きくなったようだ。
今までの鬱憤を晴らすかのように罪無き人をその餌食としていく。
この豹変振りはおそらく彼の大叔父の末路に関係しているのだろう。
彼の大叔父・・・斎木と呼ばれた財閥の長・・・もまた混血として千を超える人間の命を奪い、その挙句七夜黄理に惨殺された。
その時一族もその大半が黄理の手にかかり、斎木と運命を共にした。
彼だけ、幸運にも表の仕事の為、当時、屋敷から外していた為、辛くも難を逃れた。
だが、混血として完全に外れたはずの大叔父を惨殺した事実は彼の心に強い衝撃を与えた。
更に、偶然生き残った遠野槙久の話では信じ難い事に、七夜黄理はよりにもよって真正面から挑み長を殺したと言う。
その話に恐れをなして、彼は七夜・・・いや正確には七夜黄理の幻影に怯え、七夜に見つからぬ用にひっそりと隠れ住んでいた。
だが、その七夜黄理が引退した今自分に敵う者などいる筈が無いと、彼はそう思い込んだ。
黄理の幻影に怯えていただけにその反動は大きく、過激な物だった。
それ故、組織が自分を始末する為七夜を差し向けたという報告を聞いてもさして恐怖は無かった。
「七夜が?」
「はい、どうも組織が・・・」
「構うか放っておけ」
「で、ですが!」
「はっ、七夜黄理は引退しその後釜をさして名も出ない若造が継いだのだぞ。どの道七夜もたかが知れていよう」
「はっ・・・」
「くっくっくっ・・・まあその刺客を返り討ちにしてその報復の名目で七夜を滅ぼすのも悪くないな・・・遠野をもってしても滅ぼせなかった七夜を俺が滅ぼす・・・良いシナリオじゃないか・・・」
既にその先の事まで考えている男だったが彼は気付かなかった。
現世代の七夜は確かに黄理や志貴ほどの絶対的な名声も無いが、黄理と言う鬼神を憧れとし、そして志貴という死神を目標とし、弛まぬ鍛錬を積み重ねた結果、七夜の歴史上最強と呼ぶに相応しい暗殺者集団と化していたことに。
そして、それは男のみならず女にも適用されていた事に・・・
ほぼ同時刻、屋敷周辺には男の血族でもある混血の中でも更に選りすぐりの精鋭が警備を固めていた。
正門を警護していた一人が不審な人影を見つけたのは警備を始めてまだそう時間もたっていない頃だった。
「誰だ?」
「女?」
夜目の利く一人が呟きの様にこちらに向かってくる人影は女だった。
それも絹の様に滑らかな肌、その黒髪は背中の中間部分まで伸ばしたセミロングを艶やかに、その年齢には似合わないほど着物を完璧に着こなした美女。
「何だあの女?」
「気を付けろ七夜の刺客かも知れんぞ」
その女の姿を見ても油断せず、一人が女に近寄り銃を構え威嚇する。
「女、何の用だ。ここは私有地。おいそれと入って良い場所ではないぞ」
どすの聞いた声で脅す。
それに怯えて逃げるようであるならばそれでよし。
刺客ならばここで射殺すれば良いだけ。
女は怯えるでもなく、にこやかに鈴のような涼やかな声を発した。
その内容は平穏に程遠いものであったが。
「はい存じております。罪無き人々を浅ましく貪っている恥知らずの混血のお屋敷でございましょう?」
「!!」
即座に刺客と判断し、引き金を引こうとする。
通常であるならば迅速に相応しい行動であった。
だが、今回は遅すぎた。
―閃鞘・七夜―
引き金を引くより前に首の動脈、静脈が切り裂かれ、鮮血が噴水の如く吹き上がる。
何時の間にか女の両手には二振りの細身の短剣が握られていた。
それぞれ『淡雪』、『朧』と柄に刻まれている。
「!!」
その様子を見守っていた同僚にも同時に、頭上から突如として襲い掛かってきた短刀が寸分の狂い無く眉間に突き刺さる。
次々と倒れ付し、和服の女以外立っている人間はいなくなった・・・地上には。
「小夜、もういいわ」
「全部片付いた?雪姉さん」
そう言って隣に現れたのは、同い年と思われる最初の女と極めて酷似した顔立ちの女。
一方が髪をセミロングにまで伸ばしているのに対してもう一方は肩口ほどで切り揃えている。
「ええ。この一帯は片付いたわ。後は周囲ね」
「じゃあ、ちょっと片付けてくるね」
まるで少し掃除を行うかのように軽く告げる。
「ええお願い小夜。私は西回りから片付けてくるから」
「じゃあ私は東回りね。後屋敷内は?」
「もう晃と誠が侵入している」
「そっ。相変わらず仕事が早いわね」
「良いじゃない。早いに越した事はないんだし・・・それに、終わったら誠にいっぱい愛してもらえるんでしょ小夜?だったら時間があったほうが良いに決まっているじゃない」
その言葉にさっと白磁のような肌を真紅に染める。
どうも心当たりが多々あるようだ。
「っ!!そ、そういう雪姉さんだって!」
「うん。晃がたくさん愛してくれるの。だから手早く終わらせよう小夜」
双子の妹の指摘にも動じる事も無く満面の笑みを浮かべて肯定する。
「わ、わかったわよ・・・ってもういない」
事実、女・・・七夜雪・・・は既に姿を消していた。
「全く・・・子供の頃はあんなおどおどしていた姉さんが晃と結婚したと同時に、あそこまで積極的になるとは思わなかったわ・・・それよりも私も片付けないと・・・誠との時間が無くなっちゃう」
そう呟くと女・・・七夜小夜もまた影に溶ける様に消えていった。
そんな外の状況など知る由も無い屋敷内であったが、こちらでも外と似たり寄ったりの状況が起こっていた。
「ふう・・・」
一人の男が中庭にて用を足している所に音すらも無く影が忍び寄っていた。
「??」
妙な気配を察し振り向こうとした瞬間には既に男の息は無かった。
―閃鞘・八穿―
怪訝な表情のまま男の生首が地面に落ちていた。
そして鮮血が地面を叩くが、そこには立ちすくむ胴体以外には気配など微塵も無かった。
同時刻、ある廊下には数人の警護の男達が屋敷内の状況報告を交換し合っていた。
その死角にやはり音も無く一つの影が忍び寄る。
だが、気配遮断が完璧なのか男達は気付く様子も無い。
その影はニヤリと笑うと手に持つ得物を構えた。
―閃鞘・八点衝―
何か重い物体が空気を切る音がかすかに聞こえた時には廊下に人影は無く、どうやればここまで出来るのかと首を傾げたくなるほど、凄惨にぶつ切りにされた人間の肉体があった。
屋敷の内外で静かにそれでいて迅速かつ確実に行われる処刑。
それは屋敷内の誰にも気付かれる事なく遂行されていった。
その異変に屋敷の主が気付いたのはもはや生存者が自分一人になった時だった。
「おい!酒だ!酒を持って来い!!」
控えている筈の執事を呼びつける。
が、当然誰も答える者はいない。
「聞こえねえのか!!酒を持ってこいと言っているんだ!!」
そんな事にも気付かず酒を要求する。
それに答える声は当然ながらない。
「何をしてやがる!!酒を持って来いと言って・・・!!」
あまりの反応の無さに苛立ちドアを開ける。
そんな彼を出迎えたのは生首だけの執事だった。
「!!」
ふと見れば近くに血に塗れた肉塊が転がっている。
血に変色し、更にはバラバラに切り刻まれているが、そのデザインから執事が身に着けていた服だと推測する。
「な、ななななな・・・だ、誰かいないのか!」
絶叫に答えるのは澱んだ沈黙だけ。
ここに来て周囲が死体だけだとようやく気付いた。
廊下にはいたる所で人体の残骸が血をコーティングして転がり、中庭には不出来なオブジェの様に立ち尽くす胴体が存在し、護衛の詰め所に至っては・・・筆舌に尽くしがたい惨殺光景が広がっていた。
「ひっ、ひぃいいいいいいいい!!」
傲慢の底に眠っていた七夜への恐怖が鎌首をもたげた。
「あ、あああああああ・・・う、うわああああああああ!!」
無様な悲鳴をあげながら、転がるように裏口から屋敷の外に飛び出した。
だが、そこも既に地獄の一部だった。
「ひぃ!」
目の前に護衛の死体があった。
眉間に何か鋭利な刃物を突き刺した痕が残っておりこれが直接の死因と思われた。
だが、屋敷内の死体と違い、その表情には驚愕と苦痛、そして恐怖の色が濃く見受けられる。
死ぬまでに何を見たのか?
それを想像するとへたり込みその場で失禁する。
それでも生存への執着を見せて、その場から逃げ出そうとする。
その男の目と鼻の先に短刀が三本立て続けに突き刺さる。
「!!」
「本当馬鹿ねぇ。私達から逃げられると思っているの?」
「それにみっともない。今まで数多くの人を貪っていたくせに自分の番になると無様に逃げ惑うなんて」
そう言って姿を表したのは同じ顔立ちの二人の女・・・今まで屋敷周辺の護衛を始末していた雪と小夜だった。
「な、七夜の女か・・・」
さらに後ずさる。
「無様にも程があるわよ」
「自分の罪を清算したらどうなの?」
雪と小夜の侮蔑の視線と言葉を受けている内に男に屈辱が湧き上がった。
黙って聞いていれば言いたい放題言いやがって、馬鹿な女共が・・・
いいだろう。貴様らに俺の力見せてやろう・・・
それと同時に傲慢が甦った。
相手は七夜とは言え女が二人、さしたる脅威でもない。
護衛が全滅したのもこの役立たず共が油断しただけ。
自分が本気を出せば捻り潰すのも容易いに違いない・・・いや、容易いに決まっている。
いや、一思いに殺すのはもったいない。
よくよく見れば揃っていい女だ。
ここはじわじわと嬲り殺しにするのも悪くない・・・
その口元に嗜虐の笑みを浮かべ、ゆらりと立ち上がる。
「やる気になったみたい」
「それに下衆な笑みを浮かべているわね」
「どうせ私達をなぶりものにする気なんでしょう」
嫌悪を露に二人とも得物を構える。
「くくく・・・馬鹿な女だ。暗殺しか出来ない七夜が俺と真っ向から戦うのか?まあ安心しろ。直ぐには殺さねえ。たっぷりと愉しませてもらってからな」
「やっぱり・・・」
「本当最低ね」
罵声を浴びせるが、その声も今の男には心地よい。
あの女達の口からは直ぐに恐怖と絶望の悲鳴を聞く事が出来るのだから。
「さてとおしゃべりは終わりか?・・・じゃあ行くぜ・・・直ぐに終わるなよ」
そう言って二人に襲い掛かろうとするが、その直前、雪の言葉が不吉な予言となって響き渡った。
「いいえ、直ぐに終わるわよ。だってあなたの相手は」
―閃鞘・伏竜―
視界の片隅で何かが振り上げられるのが見えるのと同時に、激痛と同時に吹き飛ばされた。
「私の夫だもの」
雪の言葉に重なるように怒り心頭の声が発せられる。
「それで?誰の女房を使って愉しむって言ってんだ?この外道」
激痛に耐えて立ち上がる。
どうやら腹部から肩口にかけて袈裟斬りされたらしい。
傷は深いが再起不能と言うわけでもない。
視線を前方に向けると、そこにはどうして気付かなかったのか、歳若い青年が雪と小夜の前に二人を守るように立ち塞がっていた。
その手には青年の身の丈とそう変わりない柄の戦斧が握られている。
「おいこら、くそ混血。雪は俺の女房だ。そんな薄汚ねえ手で触れようとするんじゃねえよ」
「ぐ、ぐううう・・・ま、まだいたのか・・・七夜が」
「もう一人要るけどな・・・最も俺よりも陰湿にてめえがやろうとした事に関して報復するけどな」
「なんだと・・・?」
何がなんだかわからないといった男だったが直ぐに答えがもたらされた。
―閃鞘・双狼―
男の両腕が切り落とされた。
「ひっ!ぎゃあああああ!!」
更なる激痛にのた打ち回る。
「この程度でのた打ち回るかな普通?」
そう言って戦斧を構えた青年の隣に現れたのはその手に小太刀を持った同い年の青年。
「ていうか誠。お前わざと手を抜いただろ?」
「わかるか?晃」
「当たり前だろ。いつもなら痛みも与えずに仕留めているって言うのに今回はあえて痛みを与えたろ?」
「まあね。いつもならこんな事しないけど。少し頭に来たから」
「まあ判るけどな」
互いに顔を見合わせて苦笑する。
よりにもよって自分達の妻に下衆な欲望をむき出しにして襲い掛かってきた事に怒り心頭の様子だった。
「さてと・・・仕事終わらせるか。雪、下がってろ直ぐ終わらせる」
そう言って同時に戦斧『天雷』を構える七夜現当主の一人七夜晃。
「そうだね。小夜、君も下がって。帰り支度していて良いから」
その言葉に同意し、小太刀『比翼』を構え直す同じく七夜現当主の一人七夜誠。
本来一人しか選ばれない七夜一族当主の座にその拮抗した技量ゆえに揃って就く事を先代黄理より許された。
七夜の歴史上最強と呼ばれる現世代の中でも『裏七夜』頭目に選任された志貴を除けば最強の二人。
「ひ、ひひひひひひひ・・・」
両腕を失い、重傷を負いながらも何とか立ち上がりよろめきながら逃げ出そうとする。
だが、それを許す訳もない。
「逃がす訳ないでしょ!!」
そう言うと下がっていた小夜は自身の得物を取り出す。
それは先程男を足止めした短剣ではなく、ブーメランだった。
ただし、そのブーメランは木ではなく鉄で出来ており鋭利な刃の様に研ぎ澄まされていた。
また夜間の奇襲を主としているのか墨で黒く塗られている。
そのブーメランには『空旋』と刻まれていた。
それを躊躇い無く投擲する。
小夜の手から放たれた『空旋』は意思を持つかのように前方の晃と誠の間をすり抜け逃げ出そうとする男の両脚のアキレス腱を切り裂き小夜の手に帰ってくる。
受け止め方を誤れば手の指を全て失いかねない凶器と化した自分の得物を小夜は軽々と受け止める。
両腕を失った事で攻撃の手段を失い、アキレス腱を切られた事で走る事も出来なくなった男に出来る事はもはや
「た、たすけ・・・助けて・・・い、いの・・・命だけは・・・」
恐怖の余りもつれる舌を懸命に動かし命乞いをしつつ、身体を芋虫の様に這い蹲らせ身体を引き摺るように逃げる事だけだった。
その言葉に怒り以上に哀れみを含んだ視線を向ける七夜の刺客四人。
「はぁ・・・聞くがお前が今まで殺してきた人間は誰一人も命乞いしなかったのか?」
「で君はそんな人達をどう遇してきたんだい?」
「あ、ああああああああ・・・」
何か言おうとしていたようだが、これ以上聞く気は無かった。
晃の戦斧は男の首を容易く刎ね、誠の小太刀は心臓を易々と貫いた。
普通の生物なら首を刎ねてしまえばそれで事足りるが物事には例外もある。
それ故首を刎ねた後止めを刺す様に心臓を貫き止めを刺した。
「これで終わりか?」
「そうだね。動く気配は無いね」
「これで動いたら怖いけどな」
「怖いというよりそうなったら僕達の手には負えないよ。志貴の出番だよ」
「言えてる」
『裏七夜』頭目として自分達よりも冗談ではない敵と命の遣り取りをしている志貴を思い浮かべ苦笑する。
「晃!」
そこに雪が遠慮無しに晃に飛びついてきた。
「えっと?雪どうした?」
「晃!外の護衛いっぱい殺したよ!」
「そ、そうか・・・ありがとうな雪」
いつものおねだりなのだと判断した晃は直ぐに優しく抱きしめる。
それに心の底から幸せそうにされるがままにされる。
「ははは、相変わらずだな」
「誠!」
「って、小夜?」
「私だって、さっき足止めしたよ!」
「そ、そうだったね。ありがとう、助かったよ」
そう言って若干拗ねたような表情を見せる自分の妻を抱きしめる。
たちまちの内に表情を笑顔に変えて誠の胸元に頬を摺り寄せる小夜。
「まあ僕の方も人の事は言えないか・・・それはそうと小夜、駄目だろ。混血の前にわざわざ出てきちゃ。もうあれ一人だけだったら良かったけど、まだいたら危ない所だったんだぞ」
苦笑してから誠は直ぐに真面目な表情に変わると胸元の妻に混血に姿を表した事を咎めていた。
「そうだ雪、お前にもあれだけ奇襲に専念しろって言っただろう」
それに思い出したように晃も妻に注意を促す。
「だって・・・あの混血逃げようとしていたから足止めしようと思って・・・」
「うん、それに他は晃達が殺してくれているって思ったから・・・」
怒られて・・・と言うよりやんわりと注意されて嬉しそうな表情から一変、しょんぼりと沈んだ表情で理由を話す雪と小夜。
「まあその信頼は嬉しいけど・・・」
「もう少し自分の事も大事にしろよ」
「「はい・・・」」
「んじゃ帰るか。これ以上ここに来ても仕方ないだろ。もう終わったんだし」
「そうだね。屋敷に戻ろう」
この一件以降、七夜の恐怖は改めて混血の間に広がり、七夜は混血の暴走に対する抑止としての役割を再度確立する事になった。
『羅刹の夫婦』・・・七夜現当主夫妻に与えられた称号であるが、本人達は一度とて名乗った事はない。
その理由は単純である。
今の七夜には自分達よりももっと『羅刹の夫婦』と呼ばれるに相応しい夫妻がいるのだから・・・